あらすじ
午前7時40分。
まだ誰もいないはずの教室には、いつも決まって先客がいる。
隣の席の女の子、瀬戸(せと)さんだ。
「……うう、やっぱりここ、わかんないなぁ」
彼女は、お世辞にも勉強が得意とは言えない。
けれど、ノートが真っ黒になるまでペンを動かす、誰よりもひたむきな努力家だ。
窓から差し込む柔らかな朝日。
静まり返った教室内で響く、二人の筆記音と、控えめな話し声。
「ここ、こう解くんだよ」
「あ……! そっか、わかった! ありがと、君って教えるの上手だね」
至近距離で弾ける、彼女の無防備な笑顔。
教科書を覗き込むたび、ふわりと広がるシャンプーの香り。
勉強を教え、教えられるだけの関係。
……のはずなのに、僕の心臓の音は、静かな教室でやけに大きく響いてしまう。
これは、不器用な彼女と僕が綴る、始業前までの二十分間の恋物語。