あらすじ
銀貨の鳴る音と、羊皮紙の擦れる音が商会室に響く。
「あなたの頭脳、私に預けなさい」
腹黒い商会令嬢リーナの赤い爪が、机上の契約書をトントンと叩く。
前世は地球のトップエンジニア。今は「廃棄物」と唾を吐かれる半ドワーフ。
魔法の「芸術性」と「詠唱の美しさ」を絶対視する王立魔法学院で、アーガスは油まみれの指を動かしていた。
彼は華麗な韻律を無視し、論理(ロジック)とプログラミングで魔力を書き換えていく。
「威力が足りない? ならば『122mm加農砲』を撃て」
「詠唱が遅い? 『C4』の爆発で吹き飛ばせ」
物理法則で神話の怪物を肉片に変え、圧倒的な火力でエリート貴族の常識を炭の塊にする。
その硝煙と熱量の中、リーナは甘い香水を漂わせて歩み寄る。
彼女は、その頭脳がもたらす「世界を焼く炎」と、周囲で虎視眈々と狙う悪意を完全に見透かしていた。
「誰にも渡さないわ。私の『黄金の契約(鳥籠)』に入りなさい」
物理で魔法をねじ伏せる理系直男と、人心と資本を操る腹黒令嬢。
アーガスは逃げ道のない完璧な条文を睨み、目尻をヒクつかせた。
リーナの甘い香水が退路を塞ぐ。彼女は微笑み、彼の無骨な手に半ば強引にインクペンを押し付けた。
アーガスは奥歯を噛みしめ、羊皮紙に力強く名前を刻み込んだ。
紙がパタンと畳まれる音は、鳥籠の鍵が閉まる音。
レンチを握り直す硬い金属音が、世界を転覆させる危険な共犯関係の始まりを告げた。