あらすじ

十二月の小さな町で、佐知は雪をかく。スコップを入れるたびに、昨夜空から降りてきたものが形を失っていく。手のひらに乗った雪片は、触れた瞬間に溶ける。殺したのは自分の体温だと、佐知は思う。 二十七歳、一人暮らし。壊れているわけではない。日常を送れている。食パンを焼き、隣人と挨拶を交わし、母の電話に出る。ただ、世界の手触りが少しだけ他の人と違う。純粋なものに触れると壊してしまう気がする。その感覚を誰にも説明できないまま、佐知は毎朝、自分の体温とともに外に出る。 生きているだけで何かを溶かしてしまう人間は、誰かのそばにいていいのか。 現代の雪国を舞台に、ひとりの女性の知覚を通して「存在することの重さ」を描く全五章の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/03/05
  • 現在の作品溶けるための体温