あらすじ
新学期早々、助手のサクタロウがインフルエンザでダウンする中、如月学園に『ありえない不純物』が出現した。
如月コンツェルンから贈られた由緒ある鏡餅に、フェルトの手足が縫い付けられ『たぬき』の姿に成り果てていたのだ。
密室の校長室で起きた奇妙な悪戯に学園がざわつく中、孤高の天才令嬢・如月瑠璃のアメジストの瞳に、底知れぬ探求の火が灯る。
「さて、どこの愚鈍な輩が生み出した不純物か、暴いてやろう」
忠実な運転手・黒田のみを伴い、瑠璃はデジタル機器を一切排した極限のアナログ鑑定――銀のルーペと絶対の精度を誇る懐中時計、そして『物理的観察眼』と『情動の視座』を武器にルーツを追い始める。
鏡餅のたぬき、文庫本に挟まれたアクリルの鮭、最新のデジタル時計に絡まる古い絹糸、隣町の改札に貼り付いたちぎれた国旗、美容室のカーラーに異常な張力で巻き付けられたギターの弦。
一見何の関係もない5つの奇妙なガラクタは、アルミサッシの熱収縮、靴底の微細な泥、カセットテープの環境音、そしてわずか『3.2秒』のインフラの遅延という物理的な痕跡によって、一本の線で繋がっていく。
そのルーツの終着点に浮かび上がったのは、月見坂市のネットワークを完全に掌握し、無関係な人間たちの心理と行動を秒単位で操作して『完璧な偶然の衝突』を引き起こす、神算鬼謀の『姿なき天才』の存在だった。
都市全体を己の箱庭として操る冷徹な黒幕が仕掛けた、恐ろしく精巧な5つの不純物。
それは単なる事件ではなく、かつて瑠璃を打ち負かしたあの幻影からの、次なる舞台への『招待状』であった――。
デジタルの完璧な盤面を、孤高の令嬢が究極のアナログで叩き割る!
再び幻影との極限の頭脳戦が幕を開ける、珠玉のアナログミステリー第8巻。