あらすじ
「……ひどい味だな」
夜、とあるバー。天井に吊るされたランプがオレンジがかった光を落とし、磨き上げられたボトルの列を柔らかく照らしている。スピーカーから静かに流れるジャズが、空気に溶け込んでいた。
カウンター席の端に座る老人は、手元のグラスをじっと見つめたまま、ぼそりと漏らした。眉間に深い皺を刻み、ゆっくりとグラスをカウンターへ置く。琥珀色の液体が老人の吐息に合わせるように、かすかに揺れた。
「おいおい、そりゃ聞き捨てならないね、じいさん」
三つほど離れた席に座る男が、体を傾けて声をかけた。
「ここはこの辺じゃ一番の店だぜ。おれが保証するよ」
男は足を組み替え、マスターへ視線を投げた。