あらすじ
司書見習いのアリスが赴任した「無限書庫」は、天井まで届く書架が果てしなく続く古代図書館だった。
最初の仕事は単純なはずだった——配架リストの記号順に、本を棚へ戻すだけ。しかし記号の羅列を眺めるうちに、アリスは気づく。これは一本の線ではない。幹から枝が分かれ、さらに小枝が分かれる——木だ。
その発見を皮切りに、アリスの問いは止まらなくなる。なぜ一冊の本は一箇所にしか置けないのか。「広い本」と「深い本」はなぜ別の棚にあるのか。本と本のあいだに走る無数の糸は、何を意味するのか。
師の老司書エマは、問うたびに「もう少しよく見てごらん」と返すだけだ。
三年間の問いと発見の果てに、アリスはついて最後の試練に立つ。エマから手渡された紙には、たった一行。
「『知識』とは何か?」
本の中にあるのではない。人の頭の中にあるのでもない。それは——。
「分かる」ことより「どう分からないかが分かる」ことの方が、豊かかもしれない。知識の構造を巡る、一人の司書の成長譚。