あらすじ
六人を象る、歪な砂時計が流れ出す――。
高校二年生の四月。放課後の旧校舎三階、写真部室は、四人の幼馴染にとって何者でもなくていい「聖域」だった。
「風景なら、失敗しても誰も傷つかない」。 そう嘯き、レンズを盾にして他者と向き合うことから逃げ続ける部長・西村駿。
彼を「ヒーロー」と慕いながら、親友の大野悠斗に密かな恋心を抱く紡木陽向。
そして、家庭の事情や過去のトラウマから、組織という枠組みを拒み続ける悠斗と坂口璃奈。
名前を貸し合うだけで成立していた四人の関係は、ピントの甘い写真のように曖昧で、微睡み(まどろみ)のように心地よかった。
しかし、唐突に突きつけられた「廃部の危機」が、止まっていた砂時計を無慈悲にひっくり返す。
自分を変えたいと願う新入生、石田沙耶と、選ばれなかった挫折を持つ中原陸の加入が、四人の閉じた世界に静かな、けれど確かな歪みをもたらしていく。
「あの日、君はどうして『これがいい』と笑ったの?」
ポートレートを撮れないという駿の「欠落」は、そのまま彼が抱える他者への恐怖だった。 落ちゆく砂が境界線を埋めていく。それは、彼らが「幼馴染」という名の夢から目覚め、それぞれの明日を追い始めるための、静かな幕引きだった。
本作は「小説家になろう」掲載作『ポートレート-あの日、私を見てくれた人へ-』の再編集版です。カクヨム版では、描写のブラッシュアップや構成の変更を行い、より深く物語を楽しめる形に整えています。