あらすじ
母は十六歳で隣国へ嫁ぎ、翌年、私を産んで亡くなった。
彼女の名はどの正史にも残っていない。
だがこの大陸には、「偉大な王」と称えられる二人の王がいる。
ひとりは私の父。
もうひとりは、母の祖国の王。
二人はかつて、同じ言葉を私に告げた。
――自分を王にしたのは、お前の母だ。
母・アーシャは、龍の力を宿す王女だった。
政略結婚により隣国へ嫁ぎ、やがて一人の娘を産む。
しかしその裏で、彼女はある決断を下していた。
愛する者を守り、国の未来を守るため、己の命と引き換えに“龍”を託すという選択を。
歴史に名を刻まれることなく消えたひとりの王女。
だが彼女の選択は、二人の王を生み、やがて大陸の運命を動かしていく。
これは、歴史に記されなかった母と、
その真実を知る娘の物語。