あらすじ
異能鑑定が100%の真実とされる世界。残留思念、千里眼、嘘発見──。人々は思考を捨て、「神の託宣」としての異能にすべてを委ねていた。
探偵ギルドの最底辺で証拠品整理に従事する青年・カイは、異能を一切持たない「無能力者」として蔑まれ、ついにはギルドを追放される。
だが、彼だけが見えていた。
異能が示す「美しき真実」の裏側に潜む、あまりにも卑俗で、あまりにも残酷な物理的矛盾(バグ)を。
追放の日、ギルド長が「完全密室」で殺害される。
全知全能の異能監視網《パノプティコン》が「犯人不在」を保証する中、抜き取られた心臓は、解剖学的にあり得ない角度で天秤に捧げられていた。
「神の眼に『ゴミ』が混じったんですよ。――物理学の復讐へ、ようこそ」
ボロボロの鞄を手に現場へ乱入したカイが、論理という名のメスで世界を解体し始める。
だが、彼はまだ知らない。
その論理が導き出すのは、救いではなく、この世界の根幹を揺るがす最悪の真実であることを。
これは、奇跡に酔いしれる世界を処刑台へと引きずり出す、孤独な鑑定士の物語。