あらすじ
「死ぬの?」
――その一言から、彼との出会いは始まった。
生きることに理由を見失い、病院の中庭で死を選ぼうとしていた〈私〉の前に現れたのは、
小さな車椅子に不釣り合いな長い四肢を持つ、奇妙な少年だった。
彼は言う。
「死ぬのは効率が悪い」
「代わりに、君の“時間”を少し分けてほしい」
小児科に長く入院しながらも、年齢不相応に達観した言葉を吐く少年――香久耶兀斗。
彼は自らを「普通の人間より、少しだけ速く生きている存在」だと語り、
誰が退院し、誰が“いなくなる”のかを言い当ててきた。
偶然か、それとも――。
心に澱んだ生への倦怠感を抱える〈私〉と、
時間を異常な速度で消費し続ける少年。
二人が出会ったとき、止まっていた〈私〉の時間と、
加速しすぎた彼の時間が、静かに交差し始める。
彼が本当に知っているのは、未来か。死か。
それとも――人が生きる“意味”そのものなのか。
これは、
「生きたいと願えない人間」と「生きすぎてしまった少年が出会い、
互いの時間を削り合いながら、運命を変えていく物語。
彼の差し出した手を、私は掴んでしまった。
その代償が、どれほど残酷なものであったとしても――。