あらすじ
大学生の佐和は、ひな祭りの時期に実家へ帰省する。母は忙しく、祖母は雛飾りを楽しみに待っていた。押し入れから取り出された緋毛氈は、畳の部屋を一瞬で“赤い舞台”に変える。
並べ方の「正解」をスマホで探そうとする佐和に、祖母は静かに告げる。
雛さまは、正しく並ぶより、誰の手で並べられたかが大事なのだと。
風が窓から入り、緋毛氈が波打つ夜。母の「ちゃんと」の正体が、祈りと後悔の混ざった不器用な願いだと知った佐和は、形ではなく“手つき”を持って家を出る決意をする。
赤い床を渡った風は、やがて彼女の未来へ渡っていく。