あらすじ
火星コロニーの生活はうんざりするほど窮屈だった。
濾過され、循環する空気の電気のにおいに定期検診、ワクチン接種、重たい磁石の靴、つるつるした道や狭い街。
最近の私の楽しみは地球の記憶を再現したVRサービス『JODO』だった。
アートディレクターであるお姉ちゃんが開発したその空間には、地球に残してきた家がそっくりそのまま再現されている。
『JODO』に隠されたメッセージを頼りに、瞳を覗き込んだとき、私は、墜落した。
どこまでも続く砂漠、青い空、虹を背負う巨大な座像、そして終わりなき心地よさ。
なぜ、私はここから帰りたくないのか。
やわらかい檻に囚われてゆく、SFサイコホラー。