あらすじ
天界の時計が止まり、地獄の業火が凍りついた。
世界の均衡を支えていた「慈愛の核」――聖母マリアが、下界の人間の手によって生け捕りにされたのだ。
天界と地獄を分かつ「断罪の門」で、本来ならば相容れないはずの二つの影が並び立つ。
白銀の甲冑に身を包んだ冷徹なる大天使・ミカエル。
漆黒の革ジャンを羽織り、不敵に笑う悪魔・ベリアル。
彼らが愛し、守り、崇めてきた共通の「親」であるマリアが、人間という卑小な存在に利用されている。瀕死の子供の泣き声を利用した卑劣な罠。人間たちは聖母の奇跡を「資源」として奪い、自らの文明を加速させるための燃料……「神の電池」として彼女を檻に閉じ込めたのだ。
「人間……。神が愛し、我ら天使が守護してきた種族が、これほどまでに醜く肥大していたとは」
「愛だの何だの、甘やかしてきたツケが回ったんだよ。地獄の亡者だって、あそこまで恩知らずじゃねえ」
かつては「守るべき羊」であり「収穫すべき魂」であった人間。
だが、変わり果てた姿で涙を流すマリアを目の当たりにしたとき、天使と悪魔の心から「慈悲」の二文字が消え失せる。
共闘する白と黒の閃光。
崩れ去る摩天楼。
科学という名の傲慢を焼き払う、聖なる裁きと魔なる終焉。
これは、人類が「神」と呼んだものたちに見捨てられ、地球という舞台から静かに消え去るまでの、一午後の物語。
――もはや、救済の段階は過ぎました。
――魂ごと、その場で塵(ちり)にしてやる。