あらすじ
「これ、なんの本? ここ、なんて読むの?」
十二歳のきみにはまだ読めない字もあったのだろう。
「この国の短い詩と、隣の国の詩をまとめた本だよ。千年くらい前の人がね」
きみの指さす先にあった文字をゆっくりと読みあげる。
「昔一緒に親しく遊んだ友人は今はもういなくなって、雪や月や花を見ると、とりわけ君を懐かしく思い出す。そういう意味の詩だよ。
もとの詩はもっと長いけれど、この本をまとめた人には、この部分が特に響いたんだろうね」
僕も好きだよ、と言うと、きみの黒い瞳に明るい光が差しこむ。
「『雪月花』って、術の名前みたい」
「術?」
歳の離れた僕ときみの、記憶の話。