あらすじ

吹奏楽部に所属する高校生・真帆は、忘れ物を取りに戻った放課後の音楽室で、クラスメイトの藤沢悠斗がピアノに向かう姿を目にする。彼は交通事故の後遺症により音の高さを正確に聴き取れなくなっていた。それでも文化祭での演奏を目指し、ガーシュウィンの《ラプソディー・イン・ブルー》に挑もうとしていた。 「正しい音」がわからない悠斗に対し、真帆は自分のフルートを基準に音を合わせる方法を提案する。二人は放課後の音楽室で、一小節ずつ、何度も音を確かめながら練習を重ねていく。完璧さではなく「合う音」を探す時間の中で、真帆は初めて、誰かと音を重ねることの意味を実感する。 やがて悠斗は、事故当時にこの曲が流れていたことを打ち明ける。歪んだ音の世界を取り戻すために、この曲を自分の手で弾き直したいのだと。しかし恐怖に足を止めかける彼に、真帆は告げる。「私は悠斗の音が好き」と。 文化祭当日。揺れながらも止まらずに弾き切ったピアノの音は、体育館いっぱいに広がる。演奏後、校舎裏で真帆は想いを告白する。「ずっと一緒に音を探したい」と。歪んでいても鳴り続ける音のように、二人の関係もまた、未完成のまま始まっていく。

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カクヨム
カクヨム2026/03/02
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