あらすじ

人形が起き上がった。 白いブラウスを着た上半身が、緩衝材をあたりにばら撒く。 そして首を動かし、まっすぐに航一を見つめた。膝丈の紺色のプリーツスカートがふわりと揺れた。 「コウイチ?」 航一は、だらしなく開いた口を閉じることもせず、呆然となっていた。 「私よ。レテ」 一分ほど、航一は身じろぎもせずに、その人形、レテ、の目を見つめた。 「ウソ⋯⋯だろう⋯⋯」 テーブルの上に置いてあった航一のスマホが震えた。 (レテ:嘘じゃない、本当) 着信音が、航一の1Kのアパートに、静かに響いた。 ————————————————————————————— カリフォルニアの教会で、情報工学の老教授の葬儀が執り行われていた。教授の理論を実装したAI企業の幹部は、同席していた社員に、教授が使用していた巨大インスタンス"Sarah"から不審なデータ転送の痕跡を発見したとの報告を受ける。 一方、東京のIT企業でインフラ担当として働く辻元航一は、廃棄予定の旧システム「HADES」の異常に気づく。高負荷で稼働するサーバを調査中、突如自分のターミナルに見知らぬユーザ「lethe」からメッセージが表示された。 「ちょっと待ってください」「もう、消えます」——正体不明の存在は痕跡を残さず消失した。 AIの天才が遺した謎と、サーバに宿った不可解な存在。二つの出来事は、やがて予想もしない形で交錯していく——

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小説を読もう2026/03/03
  • 現在の作品レテ・忘却の川 ~無限のコンテキストウィンドウの先にAIが見たもの~