あらすじ
建国祭の夜、冷徹な公爵セドリック・グランチェスターは、妻セレスティーヌが「二人きりで過ごしたい」と願ったという執事の言葉を無視し、仕事へと向かった。
それが、完璧な「身代わりの嘘」だとも知らずに。
翌朝、屋敷に残されていたのは、一通の離縁届と脱ぎ捨てられた絹の靴。そして、彼が強いてきた無機質な白檀の残り香だけだった。
すべてを捨てて貿易都市カリアへ渡った彼女は、名もなき調香師「セレス」として覚醒する。
一方、消えた妻を追うセドリックの手元に届いたのは、かつての冷たい香りとは似て非なる、温かな光を宿した白檀の香水。
「これは、彼女の復讐か、それとも再生か——」
執念に駆られ、見知らぬ地へ降り立った公爵が目にしたのは、異国の貿易王の隣で、誰よりも自由に、見たこともない笑顔で微笑む「他人」となった妻の姿だった。