あらすじ
人付き合いが苦手な主人公の「僕」は、孤立することを恐れるあまり、本当の自分を隠して生きている。相手に合わせて明るく振る舞い、空気を読み、無難な言葉を選ぶ――まるで仮面を付け替えるような日々。その無理がたたり、体調を崩しながらも「平気な自分」を演じ続けていた。
ある日、体育の授業中に隠してきた腕の幾つもの白く薄く残った痕をクラスメイトに見られてしまう。さらに、誰にも知られていないはずの本音を書いたノートのページが、何者かに読まれた痕跡を残していた。「疲れた」「一人になりたい」「でも孤独は怖い」――隠してきた弱さが他人に知られたかもしれない恐怖に、主人公は追い詰められていく。
そんな中、階段の踊り場で出会った人物から一枚のメモを受け取る。そこには「消さなくていいと思った」とだけ書かれていた。本音を否定せず、無理に踏み込まず、それでもそばにいると言ってくれる存在。主人公は初めて、自分の弱さを隠さないまま誰かと向き合う。
劇的に何かが変わるわけではない。それでも、「本当の自分」を知ったうえで離れない人がいるという事実が、主人公の世界に小さな光をもたらす。仮面を完全に外せなくてもいい。それも含めて自分なのだと気づきながら、主人公は少しだけ前を向いて歩き出す。