あらすじ
一九八〇年。高度経済成長が終わりを告げ、日本中が空前の消費社会へと浮き足立つなか、T市の埋立地でコンクリート詰めにされた十四歳の少女・佐藤美咲の遺体が発見される。
捜査一課の刑事・久保寺耕介は、現場の凄惨さと加害者が同じ十代の少年たちであるという事実に打ちのめされながらも、執念の聞き込みを開始する。
やがて浮上したのは、地元の名士の子息を含む不良グループ「T・レックス」の存在だった。彼らは親の権力や時代の放縦さを盾に、ゲームセンターを拠点として「遊び」の延長線上で暴力をエスカレートさせていた。
しかし、捜査が進むにつれ、警察上層部からの不自然な圧力が久保寺を襲う。犯人グループの親たちが結託し、事件の隠蔽と、美咲を「素行不良の家出少女」に仕立て上げる工作を始めたのだ。
孤独な闘いを強いられる久保寺は、唯一の協力者である新聞記者の立花とともに、少女が死の間際まで守ろうとした「ある秘密」に辿り着く。それは、単なる少年犯罪の枠を超え、T市の再開発利権に群がる大人たちの醜悪な欲望に繋がっていた。
灰色の空の下、久保寺は組織の論理を捨て、一人の人間として少年たち、そして彼らを怪物に育て上げた「時代」そのものに引導を渡すべく、泥濘の中を突き進んでいく。