あらすじ
【注意】 本作は『スピンオフ』ではありません。
ある男たちの人生が、高校時代から成長することなく「同じ場所を回転(スピン)し続けている」だけの、独立した転落の記録です。
3月1日。午前10時00分。
県立高校の体育館――卒業式会場は、シベリアの強制収容所のごとく凍てついていた。
元生徒会長として規律を守ろうとする私(マサト)と、隣に座る腐れ縁の従兄弟(ケンジ)。
我々は、卒業への感動よりも、直後の打ち上げ「牛角食べ放題」への執着に燃えていた。
その軍資金となるのは、後輩女子との間で3000円での売買契約が成立している「第二ボタン」のみ。
だが、静寂の中でケンジの手が滑った。
乾いた音と共に転がり落ちた3000円(ボタン)は、あろうことか前列に座る天敵――「鉄の女」の異名を持つ元副会長・町田のパイプ椅子の真下へ不法侵入した。
動けば死(元会長としての尊厳の崩壊)。拾わなければ死(カルビ抜き)。
直立不動の姿勢を保ったまま、机の下で行われる足指だけの隠密作戦《レジスタンス》。
さらには、私の読むべき「答辞」の原稿が、ケンジの書いた「異世界転生ハーレム小説」のプロットとすり替わる非常事態が発生し……。
「チートスキル」を「伝統」へ、「エルフの姫騎士」を「恩師」へ。
絶体絶命の演壇で繰り広げられる、知性と語彙力の無駄遣いによる即興翻訳《コンバート》。
これは、十数年後に実家のコタツで3000円のお年玉を巡って争うことになる男たちの、若き日の敗北と、回転の物語である。
※♑️第3回真白賞参加作品
https://kakuyomu.jp/user_events/822139846086152150
お題「転」(物体が転がり、責任を転嫁し、意味を反転させ、物理的に転倒します)