あらすじ
天界で魂の管理をしていた下位天使の私。
ある日、上司が自らの子孫を延命するために、一人の老女の寿命を三十年も改竄していたことを知ってしまう。
真実を告発しようとした結果、罪を着せられ、私は地上へ堕とされた。
翼も力も失い、人間として放り出された私は、天界へ戻る方法を探しながらひっそりと生きていた――はずだったのに。
「放っておけるわけないだろ」
出会ってしまったのは、小さな花屋を営む青年。
不器用なくせに世話焼きで、やたら距離が近くて、なぜか最初から私を気にかけてくる人。
行き場のない私に住む場所を世話し、無理をすればすぐに見抜き、当然のように隣にいる。
「困ったら俺を頼れ。俺はお前の味方だ」
けれど彼の亡き祖母こそ、かつて寿命を奪われたあの老女だった。
真実を知るのは私だけ。
好きになってはいけない。
そばにいる資格なんてない。
それでも彼は、迷いなく私を選ぶ。
やがて天界では不正が暴かれ、上司は裁かれる。
同時に、私の中から天界の記憶と力が少しずつ消え始めていた。
もう天使には戻れないかもしれない。
それでも私は、彼にすべてを打ち明ける。
祖母の死が運命ではなかったこと。
私が止められなかったこと。
長い沈黙のあと、彼は私を強く抱きしめて言った。
「俺は、あの人が死んだ理由より、あの人がどう生きたかの方が大事だ。
それに――お前がどんな過去でも、俺は離さない」
記憶が消えてもいい。
翼を失ってもいい。
「忘れてもいい。何度でも俺が好きにさせる」
天界よりも、秩序よりも、彼は私を選ぶ。
これは堕天の物語ではない。
冤罪で地上に落とされた天使が、花屋の彼に全力で守られ、溺愛されて幸せになるまでの恋物語。