あらすじ
地方の寂れたホームセンターの店長として勤務して、はや十余年。大して振るわない営業成績を積み上げてきたが、それは実にあっけなく崩れ去ってしまった。
狂犬病ウイルスの変異株が感染線爆発を引き起こし、この世に正気な人間などいなくなってしまったからである。行政や治安機構は瞬く間に麻痺、殆どの人間は正気を失い、飢えた獣の如く、他者を襲い出す。生き残った人間もおよそ社会的に正常とは言い難い異常者に成り下がった。
そんな中、私が取った選択は現状維持だった。
即ち、ホームセンター『ニードフル・シングス』の店長であり続け、終末の世にあっても店の営業を続けることだ。経営体制も取り扱い商品が少しばかり《物騒》に刷新されるにせよ、看板を掲げ、お客様を笑顔で迎えるという事だ。
だって、正気と安寧を保つにはそうするしかない。
街は底無しの狂気が渦巻いてる。市街地では、発症者の群れが駆け回り、数少ない生存者を食い散らかそうと止めどなく涎を垂らしている。アメコミや洋画に出てくる様な無法者達が改造車を乗り回し、発症者も生存者も分け隔てなく惨殺している。
山間部や田園地帯には奇妙な新興宗教の信者達が怪しげな人身供儀に明け暮れ、救世を成そうと躍起になっている。
挙げ句の果てには、凶暴極まるJK三人組がB級映画顔負けの大暴れを繰り広げる始末。
街で唯一のホームセンターが、彼らと無縁でいられる筈がない。お客様には丁寧に対応し、『いらっしゃいませ』と微笑み、強盗には断固たる拒否を突き付けなければならないのだ。
我が社の社訓はこうだ。
『御客様第一、必要なものを必要なだけ。そして、よりより良い暮らしを御客様に』