あらすじ
「貴様のような、ただ花を弄ぶだけの無能に、聖女の資格はない!」
王都の調香聖女エルフレイデは、婚約者のレオンハルト王子から
一方的な婚約破棄と追放を言い渡される。
隣で勝ち誇った笑みを浮かべるのは、聖女の座を奪った異母妹のイザベラ。
しかし、王子たちは知らなかった。
彼女が毎日休まずに捧げてきた「香りの魔法」が、
人々の心を安らげ、国の魔力の腐敗を食い止めていた唯一の結界だったことを。
エルフレイデが城を去った瞬間、世界から「色彩」と「芳香」が失われた。
焼き立てのパンは砂のような味に変わり、騎士たちの魔剣は錆びつき、
人々は原因不明の焦燥感に駆られて互いを罵り始める。
さらには、隠されていた王子の「腐敗した魂の臭い」が露呈し、王都は急速に地獄へと変貌していく。
一方、全てを捨てて北の最果てに向かったエルフレイデは、
「呪われた氷の辺境伯」と呼ばれるジークフリートに出会う。
感情も体温も凍りついた彼の「孤独の無臭」を、
彼女の作り出す一滴の香水が、優しく、甘く、溶かしてしまい――。
「……私の側から、二度と離れるな。この香りを、私だけに独占させてくれ」
これは、自らの価値を認められなかった聖女が、
自分を愛してくれる唯一の騎士と共に、凍てついた大地を楽園に変えていく物語。
一方その頃、全てを失って自らの悪臭に溺れる王子たちは、
必死の形相で「真実の聖女」を追い始めるが、もう全ては手遅れだった。