あらすじ
戦争が続く帝国の時代。公爵夫人リリアナは、衛生兵として最前線に立たされたまま帰らぬ夫・ツリューシェを待ち続けていた。
ある夜会の席で、彼女の前に一人の女性が現れる。アナリア小国の治癒師・ナナリー。彼女は言う——「ツリューシェ様から、この王宮のことを教えてもらいました」と。
白薔薇の咲く中庭で、ナナリーが静かに語り始めた話は、リリアナの知らない夫の姿だった。戦場で交わされた密約、「愛人」という言葉、そして皇立総合病院を巡る謀略。医療への純粋な情熱を持っていたはずの夫は、目的のためなら「意地汚い手も使う」と予告していた——。
彼は本当に、ただ人を助けたかっただけなのか。
そして屋敷に届けられた、夫の革手袋。
愛か利用か、純粋か策略か。帰らない夫の「真意」が、少しずつ明かされていく。