あらすじ
電器屋の店内を進むと、広いスペースがあった。看板には『注目の新商品!』と書かれている。
なにげなくその棚を眺めて、私は思わず足を止めた。
「え、あれなに」
「ん? ああ、あれですか」
その場で立ち尽くす私を置いて、店員は躊躇なくそれに近づいていく。
「電子機鬼《でんしきき》です」
光沢のある金属で作られた厳つい表情の鬼の頭がそこにはあった。
「……いや、えっと?」
「簡単に言えば多機能家電ですね。これひとつに様々な機能が組み込まれてまして」
牙も角も眼もギラギラしていて、深い皺の刻まれた怒りの表情を見ているとなんだか責められている気分になってくる。
こんなの家に置いてたら友達もすぐ帰りそうだ。誰が買うんだこんなもん。
「一台でいろいろできるんでけっこう便利なんですけどねえ」
「そうかもですけど、なんで鬼の頭にしたんでしょうね」
「それはこの商品だけの特別な機能があるからですよ」
「特別な機能?」
淀橋は簡潔に説明する。頷きながら、私はもう一度同じことを思った。
誰が買うんだこんなもん。