あらすじ

埼玉県深谷市、第三浄水場原水。PFOS+PFOA合計値、150ng/L。環境省の暫定目標値の三倍。新聞記者の桐生奈央はこの数字を見つけて取材を始めた。花園テクノパークの跡地を撮影し、市民団体の代表に話を聞き、スーパーの駐車場でチラシを配る元工場作業員と名刺を交換した。国立環境研究所の研究者を訪ね、住民の血中PFAS濃度が全国平均の七倍だと知る。しかし研究者は「曝露があったことと、健康被害があることは別の問いです」と言い、因果関係の確立には数年から十年以上かかると告げた。行政は法令に書かれたことだけを言う。YouTuberは正確なデータと飛躍した結論を同じ動画に詰め込み、四十二万回再生される。元工場作業員は排水設備のバルブの型番を正確に覚えている手で、米軍陰謀論のチラシを刷っている。母親は子供の健康診断の封筒を開けて、検索窓に「甲状腺 腫れ 子供 原因」と打ち込む。科学者にも分からない。行政にも分からない。記者にも分からない。分からないまま、全員が同じ水を飲んでいる。

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カクヨム
カクヨム2026/03/01
  • 現在の作品令和四年度第三浄水場原水における有機フッ素化合物検出値についての暫定目標値との乖離に関する経緯