あらすじ
転生したら、封印された邪神だった。
石の奥深く、身動きひとつ取れない。流れ込んでくる数千年分の記憶が教えてくれる——かつて世界を半壊させ、勇者に封じられた神格、それが自分だと。内側には今も燃え続ける憎悪の人格。だが暴れれば体ごと崩壊する。だから前の自分は憎悪を切り離し、別の人格に蓋をさせ続けた。何千年も。
飽きたのだろう。だから異界の魂、つまり私を受け入れた。
封印の術式を調べると、一つの抜け穴を見つける。本体は動かせないが、分体なら出られる。子供の姿を借りて人間界へ。向かった先は冒険者ギルド。出した依頼はただ一つ、邪神討伐。自分を殺せるパーティを、自分で作るために。
集まったのは、勇者が怖い勇者候補。神が嫌いな元高司祭。孤児院のために戦う少女。古い封印術に魅せられた術師。そして何でも分析せずにいられない元教師の魔法使い。訳ありの五人と荷物持ちの黒髪の子供は、三ヶ月かけてヴァルド山を目指す。
道に迷い、魔物と戦い、焚き火を囲んで話すうちに、パーティは少しずつ変わっていく。シンも変わっていく。石の中では知らなかった感情の動き方を、一つずつ覚えながら。
そして最深部で本体と向き合ったシンは、三千年眠り続けた憎悪の人格に、最後の言葉をかける。
これは、退屈した邪神が選んだ、小さくて面白い終わりの話。