あらすじ

冬の駅前を歩くたび、水野葵は大学三年のあの夜を思い出す。 隣を歩きながら、何度も言葉を探したのに、結局なにも言えなかった夜。 「じゃあね」で終わったその別れのあとも、伝えられなかった気持ちだけが、ずっと心に残り続けていた。 高校に入学した春。 まだ恋と呼ぶには早すぎたころ、葵は放課後の教室で、木下佳乃と同じ時間を少しずつ重ねていく。 同じ場所にいること。 言葉を交わすこと。 わからないところを教え合うこと。 帰るタイミングが重なること。 並んで歩いても、気まずくないこと。 そんな何でもない積み重ねの中で、名前を持たなかった感情は、静かに形を変えていく。 大きな出来事があったわけではない。 ただ、放課後の教室、何気ない会話、少しずつ縮まっていく距離の中で、言葉にならないものだけが残っていった。 そしてその想いは、最後まで言葉にならなかった。 これは、伝えられなかった想いと、戻らない時間の余韻を描く、静かな青春恋愛小説。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/03/01
  • 現在の作品紫苑のあとで