あらすじ
ヴァリエール公爵家の令嬢エレオノーラは、歩けぬ脚を持ち、極彩色のステンドグラスに囲まれた円塔「鳥籠の間」に幽閉されていた。父公爵の歪んだ愛という名の檻の中で、彼女はただ朽ちていくのを待つ剥製のような存在だった。
そんな彼女の前に現れたのは、胸に忌まわしい「鉄の釘」を打ち込まれ、飛ぶ力を失った妖精の王・フィオ。
似た者同士の二人は、やがて禁忌の契約を結ぶ。
外の世界へ行く代償は、彼女の「脚」と、これまでの「記憶」のすべて。
しかし、逃亡を阻む父公爵は、娘を永遠に私物化するため、総金属製の呪われた「聖鉄のドレス」を彼女に着せ、床へと縫い付けてしまう。
妖精を焼き切る鉄の重圧、消えゆく意識。
エレオノーラが最期に差し出したのは、フィオを愛したという「心のすべて」だった。
冬の終わり、世界を浄化する「銀の雪解け」の光の中で、二人が辿り着くのは救済か、それとも幸福な破滅か。
記憶を失った少女と、彼女の愛を喰らって生き延びた妖精。
喪失から始まる、幻想的な逃避譚。