あらすじ
五つの王国に分断された世界ワランシア。
その外縁に位置する辺境――エルド=フロンティア王国は、魔物、古代遺跡、そして世界の歪みを抱え込んだ終わりに最も近い土地だった。
冒険者アルトは、この国では珍しくもない実力者の一人。
特別扱いされることもなく、英雄視されることもない。
剣を振るい、依頼を受け、生きて帰る――
それが日常であり、仕事だった。
ある日、禁域へ向かった冒険者パーティが帰還しない。
誰も大きく嘆かず、それでも放置はされない。
アルトは即席の仲間たちと共に、回収の依頼を受ける。
静かすぎる遺跡。
魔物のいない通路。
壊された刻印と、説明のつかない違和感。
そこで彼らが触れるのは、単なる事故でも、よくある犠牲でもない、世界そのものが壊れている兆候だった。
なぜ、この土地だけが歪みを抱え続けているのか。
なぜ、失われたはずの力が今も残っているのか。
そして――
これは、世界を救うために選ばれた英雄の物語ではない。
世界の歪みの中で生き延び、否応なく真実に近づいていく、一人の冒険者の物語である。