あらすじ

『首輪を贈られた花嫁は、本物の聖女でした』

婚約の日、
あなたは指輪といっしょに
首輪をくれた。

「守るためだよ」と
やさしい声で。

その声が
いちばんきつく
私の喉を締めつけていたなんて
あの頃の私は知らなかった。

夜ごと熱を帯びる金具。
朝には立てない体。
減っていく魔力を
「努力不足」と呼ぶあなた。

光に包まれる幼馴染は
涙を浮かべて言った。

「かわいそうに。
あなたには祝福がないのですね」

祝福がないのは
どちらだったのだろう。

私の胸は空っぽになっていった。
時間も、労働も、愛情も、
目に見えない魔力も。

すべて
あなたたちの光の燃料になっていた。

やがて心が消えた日、
私は森へ歩いた。

逃げたのではない。
ただ、もう
縛られる力が残っていなかっただけ。

森は静かだった。
誰も数値を測らない。
誰も期待しない。
誰も嘲らない。

そこで初めて、
私は自分の鼓動を聞いた。

「これは吸収の魔術だ」

穏やかな声が告げる。
首輪の内側に刻まれた
契約の文字。

守るためではなく、
奪うための祝福。

外された瞬間、
世界が息をした。

光が溢れたのではない。
ただ、
私の中にあったものが
私のもとへ戻ってきただけ。

森が揺れ、
精霊がひざまずき、
空が澄んだ。

そのときようやく知った。

聖女は
光を与えられる者ではない。

奪われてもなお
消えなかった者だ。

王都であなたは叫ぶだろう。
「僕が守ってやっていた」と。

違う。

私は
奪われていただけ。

指輪も、首輪も、
もういらない。

私の喉は自由だ。
私の魔力は私のものだ。
私の光は
誰かのために燃やされる薪ではない。

祝福は
選んで差し出すもの。

私は今日、
はじめて
自分を祝福する。

首輪はもうない。

それでも私は、
まだ
こんなにも
光っている。

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アルファポリス
アルファポリス2026/03/01
  • 現在の作品『首輪を贈られた花嫁は、本物の聖女でした ~奪われた魔力と心を取り戻します~』