あらすじ

二〇四一年四月。スノダ・ケイは、全てが曖昧なまま日本の病院で目を覚ました。彼が唯一保持していたのは、極寒のチェコで過ごした断片的な記憶。そして、十二ヵ国語をも操る、類まれな言語能力であった。  そんな中、医師から告げられたのは原田アキヒトという見知らぬ名と、自身の認識とは乖離した経歴。  鏡に映る顔は、かつて雪山で自分を死に追いやった男と酷似しており、さらにはエントランスで新聞を読む偏屈な中年の幻影がチラつき始める。  混乱の最中、アキヒトは自らを国家情報局と称する偽の親戚に引き取られる。そこで明かされた事実は、彼が世界最大の民間軍事会社トレント・レント・サービスから日本へ亡命してきた元傭兵であるというものだった。 アキヒトは事実を飲み込めぬまま、情報局の命により、旧岡山地域の外国人特区イノセントへの潜入任務を命じられる。  任務の内容は、特区である中央区画を支配する実力者、真田ミツキを陰ながら護衛すること。  アキヒトは彼女の危機を救うことに成功するが、潜入の事実が露呈し、情報局の仲間たちは捕縛されてしまう。しかし、アキヒトの能力を評価したミツキの独断により、同じく情報局の仲間であった天才ハッカー少女、サードアイと共に、旧後楽園の広大な屋敷で奇妙な共同生活を送ることになる。  その裏で、特区内では不穏な火種が燻っていた。第三区画長ヤージンが、アキヒトの古巣であるトレント社と結託し、大規模なミツキ殺害計画と戦争を画策していたのだ。  己の記憶の不確かさに揺れるアキヒトだったが、ミツキの持つ善性に触れ、逃避ではなく守るための戦いを決意する。トレント社の放つ刺客、そして特区を飲み込む謀略。  壮絶な死闘の果て、アキヒトは自身の記憶に隠された残酷な真実に到達する。アキヒトはトレント社で作られた十三の人格の一人、最強の人格であるウィリアム・トレントであったのだ。  彼は病院で目を覚ますと、コーヒーを持ってエントランスに向かう。自身の人格の一人である、説教臭い中年の姿を求めて。

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カクヨム
カクヨム2026/03/01
  • 現在の作品トレント・レント! -十三番目の罪-