あらすじ
【第33回電撃小説大賞 800字あらすじ ※ネタバレあり】
貧民街に住む少年セオラスは、ある日、瓦礫の山で見つけた古い白紙の本に触れたことで骨読みの力に目覚め、死者の記憶を管理する聖域「骨の書庫」の塔へと連行される。
そこは、子供たちが骨から情報を読み取るための無機質な部品へと変質させられる地獄だった。
セオラスはかつて塔で消えた姉アリアの指の骨の結晶を左手のグローブの下に隠し、塔を支配する大人たちの欺瞞を暴こうと足掻く。
彼と共に歩むのは、過酷な演算の代償として黒髪に白髪を混じらせ、碧眼を白く変色させながらも塔の死角の地図を完成させた少女ミラ。顔の半分が空白の小さな木馬を持つ親友タリス。大切な記憶を失っていく少女リーゼ。そして、塔への忠誠と、ほの暗い野心を抱き、セオラスを強く敵視しながら自らの肉体に塔の罪を刻みつけていく少年カイ。
だが、塔の支配者、司書長ベルアナが掲げる「正義」はあまりにも深く、残酷だった。
彼女は人々が正気で生きるために世界中の凄惨な記憶をダムのように塔に飲み込ませ、全人類を「平和な虚無」という名のゆりかごに閉じ込めていた。
セオラスが密かに思いを寄せる少女リーゼさえ、その思想に触れ、自ら意志を捨て「空白の器」となる道を選んでしまう。
しかし、セオラスはその「痛みのない幸福」を拒絶する。
だが、塔の最上階で彼を待っていたのは、数千年の人類の「罪」を濾過し続け、異形の神へと変貌した姉アリアだった。
アリアは最愛の弟に、自分を「神」として固定するための最後の一行を望む。
しかし、セオラスはそれをも拒絶する。彼は右手で白紙の本を掲げ、左手のアリアの指の骨の結晶を彼女の胸に押し当て、姉の背負った呪いを自らの肉体へと引きずり出した。
塔崩壊後、セオラスの左腕は世界の不浄を吸い込む「影」に変質していた。それでもセオラスは、リーゼ、タリス、ミラ、そして自分を認めぬカイの憎悪すらも道連れに、姉アリアを背負い不格好な「生」を刻む旅を始める。