あらすじ
「被告人――は、死刑に処す」
――だろうな。
男はふんと鼻で笑った。
とある法廷。重く張りつめた空気の中、裁判官の声だけが冷たく響く。
複数の殺人の罪に問われた男は、証言台の前に立ち、その宣告を受け止めていた。
死刑――確かに、重い響きだ。だが、わかりきっていたことだから驚きはしない。何人も殺し、奪い、犯してきたのだから、むしろそうならないほうが不思議なくらいだ。
もちろん命は惜しい。だが、判決が覆るはずもないだろう。国選弁護人は形ばかりの弁論を読み上げ、情状酌量の余地を並べ立てはしたが、そこに熱はなかった。まるで作業工程をなぞっているみたいに。
ま、残された時間で手記でも書いてみるか。“楽しい思い出”もいくつかあるしな。
男はぼんやりとそんなことを考え、ほくそ笑んだ。
「執行日は明日とする。以上」
「……ふぇえ?」