あらすじ

病室でしか季節を数えられなかった少女・鈴奈は、目覚めると異世界の療養施設にいた。澄んだ空気、柔らかな光、風に揺れるエーテルブルーム――そこは「今度こそ生きられる」と思わせるほど、美しかった。歩ける。食べられる。笑える。小さな幸福が胸に積もっていく。  けれど、喜びは長く続かない。境界線を越えた夜、胸の奥が凍りつき、呼吸がうまくできなくなる。告げられたのは“エーテル不耐症”。この世界の生命エネルギーそのものが、彼女の身体を蝕む病だった。  それでも彼女は折れない。痛みを「色」として記録する癖――前世で生き延びるために身につけた感覚を、今度は誰かのために使うと決める。薬草学の書を読み、調合を試し、治癒魔法が効かない熱病に挑む日々。泣き虫の少年テオは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫ぶ。「リリィおねえちゃんが世界で一番最高にかわいくてきれいで、やさしい!」そして彼女の笑顔を描いた一枚を差し出す。  司祭グランデルの厳しい視線、過保護が空回りするケイルの不器用さ、研究者レオとの静かな約束。支えられながら、リリィは“病と共に生きる知恵”を形にしていく。やがて彼女は知る。救いは奇跡ではなく、観察と手当てと、手を取り合う習慣から生まれるのだと。微光は消えない。誰かの胸で、春の花のように咲き続ける。

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カクヨム
カクヨム2026/02/28
  • 現在の作品微かなる光、そしてエーテルブルームの咲く季節