あらすじ
その人は、窓の外を見ていた。
午後の光が、榛色の髪を縁取っている。
何かを観測しているようで、何も見ていない横顔だった。
表向きは、風変わりな探偵事務所だ。
外観も内装も、街の他の建物と少しだけ異なる。
看板には小さく「境界堂」と書かれ、
その文字は控えめながらも、どこか妖しげな存在感を放っていた。
マスターは感情を理解しない。
少なくとも、本人はそう定義している。
けれど、廊下の向こうで足音が止まった瞬間、
彼の視線は、わずかにだけ揺れた。
そして、ドアの向こうから飛び込む二人の姿に、
その揺れは、ほんの少し強まった。