あらすじ
山と海に抱かれた小さな児童養護施設・若葉園。そこには、13歳で最年長となった少女・百瀬凛が暮らしている。幼い園児たちの面倒を見て、朝の鐘を鳴らし、時にゲンコツを落としながらも、誰よりも優しい心で園を支える存在だ。園長・箕輪静香は、そんな凛を「特別」と抱きしめ、深い愛情を注いでいる。
若葉園は、温かく穏やかな日常に満ちているように見える。だが、園の裏手には三つの墓があり、園長は毎朝そこに祈りを捧げる。園児たちもその姿を真似るが、凛だけはアヒルの目覚まし時計を抱いて祈るという、不思議な習慣を持っていた。
そんな園に、新しい職員・結城さえがやってくる。前職の保育園で心をすり減らし、逃げるように辿り着いた若葉園。初日から凛に“知らない人”としてリネン庫に閉じ込められるという洗礼を受けるが、職員たちの温かさに触れ、ここでならやり直せると感じ始める。
しかし、さえはまだ知らない。
この園には、誰も口にしない“秘密”があることを。
凛が抱えるアヒルの意味も、園長が涙を流す理由も、そして——若葉園に眠る「過去」の正体も。
穏やかな日常の奥に、静かに影が揺れていた。