あらすじ

一八九二年、グラスゴーで生まれた蒸気機関車が、北海道の炭鉱路線に降り立った。  石炭の匂いと零下の空気の中で、鉄は目を覚ました。  それから百二十七年。  キハ四〇─一七四、通称ヨンマル。二〇一九年三月三十一日、夕張支線の最終列車を走らせた気動車は、廃止の深夜、留置線でひとりエンジンをかける。  走るためではなかった。 「ここで死んでも、いいかな」と吹雪の中でつぶやいた老人は、二十一年後に最後の列車へ乗りに来た。 「電車くん」と呼び続けた少女は、大学生になって夕張へ帰ってきた。  ヨンマルはやっと気づく。四十二年間、黙っていたのではなかった。ただ、自分が話していることを知らなかっただけだ——と。  鉄は記憶する。  ――これは比喩ではない。

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カクヨム
カクヨム2026/02/28
  • 現在の作品【短編小説】汽笛は届いていた ~夕張の山に還る声~