あらすじ

文化人類学を専攻する博士課程の堂島理人は、神保町の古書店で『異世界転生マニュアル【完全版】』なるネタ書物を手に取る。プロクセミクス、贈与論、毒性学、比較法学——あらゆる学問を動員して「異世界での生存戦略」を体系化したその本を、理人は知的好奇心から熟読した。 三日後、理人は本当に異世界に転移した。 色彩言語で会話し、体表の色で感情を伝える種族「ルミナ人」の都市ファルーシュ。理人はマニュアルに従い、最も安全な選択を取り続ける。立ち止まり、壁際に寄り、誰にも触れず、食品の安全性を皮膚で試験し、武装集団には両手を見せて降伏する。 すべてが裏目に出た。 「立ち止まる」は捕食者の攻撃宣言。「壁際に立つ」は公開羞恥刑。「触れない」は存在否定の最大級侮辱。「食品を皮膚に塗る」は死者への呪詛。「両手を見せる」は債務奴隷の契約――。 あらゆる知識で武装しても、知識の前提そのものが通用しない世界では、正しさは人を救わない。マニュアル全12章のうち、この世界で無害だった行動はたった一つ。4秒吸い、7秒止め、8秒吐く。呼吸法だけだった。

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カクヨム
カクヨム2026/02/28
  • 現在の作品異世界転生マニュアル完全版を熟読した俺が、全項目で最悪のケースを引いた件