あらすじ
この作品は第3回日本SF作家クラブの小さな小説コンテストの共通文章から創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/sanacon3
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わたし――鴻那由多は、犬獣人の柴本光義と一緒に暮らしている。
その同居人は今日、嗅覚判定士なる資格に合格したようだ。
犯罪捜査から食品製造の検品まで、様々な場所で活躍する嗅覚判定士。
試験は筆記と実技の2段階で実施される。前者は非常に簡単だが、後者はとても難しいと有名だ。
実技試験は全10問のうち、7問以上に正答しなければ認められない。
5問の回答を終えた時点で、残る受験者は柴本のみとなっていた。
麻薬捜査を想定した6問目。
匂いを封入したキューブには、悲しみを薬で紛らす男の痕跡が込められていた。
しばらく気を取られたものの、急いで検分を全て終えて問題を突破する。
その後も迷う事態はあったが実技試験に合格。資格を認定されるに至ったのだった。
夕食を終えた後、用事があるからと柴本は自分の部屋へと戻っていった。
出てくる気配がないので様子を見に行くと、ガラにもなく何事かを考えている様子である。
試験終了後、6問目のキューブと一緒に渡された『事実のみを嗅ぎ分けよ』と書かれたメモ紙。
意図が分からず、すっかり困惑している様子だった。
わたしはメモの意図を、嗅覚を過信して事実を見落とすなというメッセージだと解釈する。
実際、匂いを介して感情や思考をコントロールする技術は、限定的ながら確立されつつあるのだ。
不幸な誰かが実在しないと知って安堵する一方、騙されたことに対し不満を口にする柴本。
他者の不幸を悲しみ、そしてそれが嘘と分かれば安堵する同居人を、わたしは好ましく思っている。
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【表紙】湯弐様( https://www.pixiv.net/users/3989101 )
【題字】腐葉土様( https://www.pixiv.net/users/15901934 )