あらすじ
【物語紹介:標本箱の聖女】
■あらすじ
「合理的配慮です。お前が俺なしでは生きられないようにしてやる」
最強の魔導騎士・ユウキに「所有物」として買い取られた治癒術師のアズサ。王宮という名の閉鎖病獄で、彼女は彼に支配され、刻印を刻まれ、その魔力を調律される日々を送る。
だが、支配されていたのは、果たしてどちらだったのか。
他者を拒絶する騎士の「孤独」に触れたとき、アズサの慈愛は、底なしの執着へと反転する。
「私を縛るなら、あなたの命ごと、私が管理してあげます」
飛竜の背、断崖の離宮、そして凍てつく湖畔の小屋へ。
彼女は「治癒」の魔法を「固定」の呪いへと変え、愛する男を永遠に腐食しない**「標本」**へと作り変えていく。邪魔な令嬢は素材に、裏切り者は石像に。
これは、世界を標本箱に変えてでも「永遠」を求めた、ある看護師(ナース)の空想が生んだ、最も純粋で悍ましい純愛の記録。
■登場人物
アズサ(山本あづさ)
元スラムの治癒術師。献身の裏に、相手のすべてを掌握したいという極大の支配欲を隠し持つ。ユウキの心臓と己の魔力回路を同期させ、彼を「生ける標本」として完成させる。
ユウキ(タカハシ・ユウキ)
王国最強の騎士。アズサを支配下に置いたつもりが、彼女の毒に侵され、肉体を「操り人形」へと変えられていく。死してなお、彼女の鼓動で動かされる「永遠の恋人」。
ミサキ
ユウキを慕う公爵令嬢。アズサの正体を暴こうとするが、逆にユウキの肉体を維持するための「燃料」として魂を削られ、結晶の奥底に閉じ込められる。
■本作の読みどころ
【逆転する主従関係】: 序盤のドSな騎士による支配が、いつしか聖女による「生命維持管理」という名の全能的な支配へとすり替わっていくカタルシス。
【五感を揺さぶる描写】: 陶器のように滑らかな死体の肌、紺青の結晶、凍てつく湖。冷たく、それでいて官能的な美しさが全編を支配します。
【驚愕のラスト】: 異世界物語が、現実のナースステーションの「静寂」へと繋がる瞬間。読者は、自分自身の現実さえも、誰かの「標本箱」の中ではないかと疑い始める。
■著者:志乃原七海より
「愛する人を、一秒でも長く、そのままの形で留めておきたい。
それは、医療従事者としての本能であり……一人の女としての、呪いです。
どうぞ、この箱の中の平穏を、最後までお楽しみください。」