あらすじ
朝は、目玉焼きの黄身から始まるはずだった。
検問で止められる人生なんて、想定していない。
それでも、私は何かを選ばなければならなかった。
三十六歳、シングルマザー。
弁当を作り、体育の有無を確認し、集団登校の列に並ぶ。
どこにでもある生活。
恋人から届いた、短いメッセージを境に、日常は少しずつ軋み始める。
仕事が止まり、口座が止まり、噂が走る。
誰も直接は責めない。けれど、世界がわずかに傾いていく。
やがて、小さな出来事が重なり、ある夜、取り返しのつかない局面が訪れる。
守るために。
間に合わせるために。
私は一つの選択をする。
それが正しかったのかは分からない。
ただ、その瞬間から、世界の見え方が変わった。
これは、静かに削られていく日常と、
最後に残ったものを掴み取るための、ひとつの決断の物語。
目玉焼きの黄身が割れる朝も、
検問で止められる夜も、
どちらも同じ一日の中にある。