あらすじ
目が覚めると、そこは前世でやり込んだ超王道RPGの世界だった。
辺境のモブキャラに転生した俺の目的は、ただ一つ。 この世界を、誰よりも早く『最速クリア(RTA)』すること。
魔王の脅威? 世界の平和? 知ったことではない。
長い階段を登るのが面倒だからと、自ら爆発罠を踏み抜いて空を飛ぶ。 ボスの前では、わざと瀕死の重傷を負って『背水バフ』を起動する。
俺にとっては、コンマ一秒を削るための「効率的なバグ利用」。 ただの自傷プレイでしかなかった。
それなのに。
「また御自身の身を挺して……! あなたはどれだけ、この理不尽な世界の痛みを一人で背負うおつもりですか……っ!」
パーティーの回復役である聖女は、大粒の涙をこぼしていた。 どうやら俺のタイム短縮行動を、『誰よりも優しく尊い自己犠牲』だと致命的な勘違いをしてしまったらしい。
血まみれの俺の頬を撫でる彼女の瞳には、ひんやりとした異様な執着が渦巻いている。
「もう、あなたを一人で傷つけさせたりしません。私の目の届くところで、ずっと、ずっとお護りしますからね……」
いや、四六時中監視されたら大幅なタイムロスになるんだが!?
勘違いは聖女だけにとどまらない。
フラグ回収を省くための『イベントスキップ』で強引に救済した女騎士も。 魔力バグを利用して助けた魔法使いも。
全員が俺に重すぎる愛情を向けて、四方八方から外堀を埋めてくる。 どうしてこうなった。俺はただ、最速で魔王を倒したいだけなのに。
絶対の効率を求めるRTA走者と、彼を愛しすぎて絶対に逃がしてくれない激重ヒロインたち。
魔王討伐の最大の壁は、魔王でも強敵でもなく――愛という名の包囲網だった。