あらすじ

誰かの代わりでしか、必要とされたことがない。 北方の凍土に嫁いだ子爵家の次女メルルは、姉の身代わりだった。 父に告げられた言葉は、たった一言。 お前でいい。 婚姻の相手は、氷の将軍と呼ばれる辺境伯。 夫婦の実態は求めない、三年で終わる契約だった。 泣いても仕方がない。 メルルには前の人生で培った料理の腕がある。 荒れ果てた砦の厨房を見た瞬間、涙の代わりに袖をまくった。 塩漬け肉と硬いパンしかなかった食卓が、変わり始める。 兵士たちの顔に笑みが戻り、脱走兵がいなくなり、志願者が増えた。 将軍は何も言わない。 ただ、毎日の皿だけが空になっていく。 深夜の厨房に薪をくべる影。 風邪の朝、扉の前に置かれた誰かのマント。 言葉をくれない人が、行動だけを重ねていく。 メルルが気づかないうちに、砦は変わっていた。 けれど契約の終わりは確実に近づいている。 そして実家から届いた一通の手紙が、全てを揺らす。 姉の婚約が決まった。 本来の花嫁を送るから、お前は帰れ。 料理で誰かを支えることしかできなかった娘が、初めて自分の居場所を問われる。 この砦に残る理由を、彼女はまだ持っていない。

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小説を読もう2026/02/27
  • 現在の作品身代わり花嫁の契約期間は三年です