あらすじ
冷徹で無表情な黒騎士に嫁いだ令嬢。
けれど夫は屋敷にほとんど戻らず、帰ってきても一瞥だけで立ち去ってしまう。
過去、婚約を結んでは女性側が去っていったという噂。
夜ごと外へ出て行く理由も分からず、屋敷には憶測ばかりが増えていく。
挨拶を工夫し、花を飾り、椅子を引き、視線をこちらへ向けさせようとあらゆる手を尽くしても、彼は“初めから彼女のいる場所に視線を置かない”。
——見てくれないなら、私が見つけにいく。
夫の休日。令嬢は身分を隠して後を追い、郊外の一軒家へ辿り着く。
そこにあったのは、噂が勝手に描いていた“秘密”とはまるで違う、あまりにも意外で、少し滑稽で、それでも胸を締めつける真実だった。
初めて交わされる、夫婦としての会話。
すれ違いの理由が明かされ、令嬢は彼の世界に踏み込むことを選ぶ。
そして彼女は、冗談めかしながらも揺るがない言葉で告げた。
冷たいはずの騎士が、初めて感情を見せる短編。