あらすじ
菊野美花は、愛されるために生まれてきた。
美しい容姿。祝福された名前。
誰もが彼女を愛し、彼女もまた“愛される自分”を愛していた。
あの日までは。
親友の優希に告白した転校生、――露木翔太。
彼は、美花を見なかった。
それだけのことが、すべての始まりだった。
やがて時は流れ、美花は結婚し、満たされた人生を手に入れる。
優しい夫、穏やかな日常。何一つ不満のない世界。
一男一女の双子の子供を授かり、幸せは約束されていた。
――そのはずだった。
同窓会の夜。息子は自作の一輪の薔薇を差し出す。
黒い針金で作られた、歪な薔薇を。
「受け取ってくれるよね? ……俺の美花なら」
その目は、かつて彼女を見なかった少年と同じ色をしていた。
愛されていたはずの人生は、静かな崩壊と共に侵食されていく。
これは、“愛されること”に殺される、物語。