あらすじ

趙幸(ジャオ・シン)は、幼い頃、いつも優しかった母に――死の間際、「呪い」をかけられた。 その一言は釘みたいに心に刺さったまま抜けず、彼は大人になるにつれて、少しずつ歪んでいく。 彼はずっと母の遺言を守り続けた。 「決して流されないで、考え続けて。少数派になることを恐れずに、あなただけの理想を貫いて」 だからこそ彼は、本当に「少数派」になった――その国では珍しい「いい人」に。 だけど、そこでいい人をやっても、報われることなんてない。 ほどなく趙幸は、悪人の手にかかって死んだ。 それでも、生前に積み上げた善行は世界に消されなかった。 死後、彼は“ご褒美”を受け取る。ある女神が彼に目を留め、善良さと優しさしかない異世界へ転生させることにしたのだ。 その世界は二百年前、女神の手でほとんど「浄化」されていた。 人々は助け合い、持ちつ持たれつで生き、同時に互いを見張り合ってもいる。悪意を抱く者は0.5%にも満たない。まるで夢みたいな理想郷だった。 趙幸は前世の記憶を持ったまま、異世界の貴族の家に生まれ変わる。 今世の母は彼に「アナンケオン」という名を与え。 アナンは新しい家で幸せに暮らした――幸せすぎて、逆に居場所がわからなくなるほどに。 昔の傷はとっくに魂をねじ曲げていたし、前世の母の死と、あの「呪い」も、影みたいにべったり張りついたままだ。 新しい暮らしが嫌いなわけじゃない。楽しいとも感じる。なのに心の奥には、言葉にできない穴があって、どうやっても埋まらない。 そんなある日、取るに足らない出来事が彼を目覚めさせた。 アナンは何度も考え始める。善とは何か。悪とは何か。その境界に、いったいどんな意味があるのか。 そして彼は、一つの答えにたどり着く。 それこそが、自分がこの世界に転生してきた“役目”だ、と。 彼はこの、優しすぎる世界に自分の手で「悪の種」を蒔く。 善人90%、悪人10%――そのバランスを保たせるために。 そのために彼は、「悪人の王」になると決めた。 悪人を守り、支配し、そして管理する王に。 アナンの行動は、ついに世界を揺らした。二百年もの間ほとんど働いていなかった「社会の免疫システム」が、彼によって無理やり起こされてしまったのだ。 事態は、この世界を管理する女神――つまり彼を転生させた存在の耳にまで届く。

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小説を読もう2026/02/03
  • 現在の作品優しい世界に悪の種を蒔く