あらすじ
魔族の中で最弱と蔑まれ、戦いと殺戮に明け暮れる日々に絶望した下級悪魔・ザイン。自ら死に場所を求めて彷徨っていた彼は、森の中で一人の少女・**小夜(さよ)**に命を救われる。「それは見た目の話でしょう」――。悪魔である自分を恐れず、一人の「心ある存在」として接する彼女に、ザインは初めての居場所を見出す。
二人は人里離れた家で、不器用ながらも温かい共同生活を始める。掃除、洗濯、そして失敗ばかりの料理。半分こにして食べるオレンジのアイス。ザインは、かつて小夜が失った親友・日陽(ひより)の面影と、彼女が背負う「自分だけが生き残った」という深い罪悪感を知る。ザインは誓う。彼女の孤独を、今度は自分が隣で支えると。
しかし、平穏は長くは続かなかった。ザインを「同族の汚点」として始末しに現れた上級悪魔・ドレイクたちの襲撃。圧倒的な力を前に、ザインは小夜を守るための「盾」となり、その身を貫かれる。
「もう、目の前で大切な人を失うのは嫌だ」
瀕死のザインを目の当たりにした小夜の絶望が、彼女の中に眠る禁忌の力を呼び覚ます。彼女の正体は、かつて世界を震撼させ、今は絶滅したはずの**「竜族」**の生き残りだった。
暴走し、敵を殲滅してもなお破壊を止めない「黒い竜」と化した小夜。ザインは日陽の霊に導かれるように、命の炎を燃やして炎の中に飛び込む。「小夜、また一緒にごはんを作ろう」。悪魔が捧げた命がけの抱擁が、孤独な竜の心を氷解させていく。
すべてを失い、それでも「心」を取り戻した二人は、壊れた家を後にする。
悪魔と竜。世界から忌み嫌われる異形な二人が、自分たちだけの居場所を求めて歩き出す。その手には、いつか交わした「一番高いアイスを奢る」という、誰よりも人間らしい約束を携えて。