あらすじ

人は不快を相殺すれば、世界はゼロになると信じた。 政府公認の秘密機関は、理不尽で身勝手な行為を繰り返す者同士を“相殺”させることで、誰の手も汚さず社会の浄化を進めていく。相殺とは本来、差し引きゼロになるはずの行為だった。 人生悩み相談コールセンター「悩み110番」で働いていた想槍剛は、相談者に感情移入しすぎるがゆえに職場を追われ、この秘密機関へ配属される。穏やかで人の痛みに敏感な彼は、煽り運転同士や軽犯罪者同士といった“小さな相殺”が成功していく様子に、かすかな違和感を覚えながらも職務に従っていく。 しかし、明確な被害者を伴う相殺案件に関わったことで、想槍は被害者遺族の生の声を聞いてしまう。その瞬間、相殺はゼロではなく、確実に何かを積み上げているのだと気づく。独断で相殺を止めようとした結果、計算は崩れ、最悪の事態を招く。想槍は組織から回収対象となり、警察官・田村しずくの裏切りによって逃亡する。 やがて相殺の存在は世間に漏れ、アルゴリズムによって「不快」を数値化し排除する社会――相殺2.0が始動する。犯罪も衝突も消え、世界は驚くほど綺麗になるが、今度は“不快耐性の高い人間”すら不要と判断されていく。 正義を足し続けた結果、人は死なずに、心だけを失った。 18782−18782=0になるはずだった相殺は、 18782+18782=皆殺しとなって完成する。 これは、理想が現実になってしまった世界の物語である。

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小説を読もう2026/02/02
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