あらすじ
30歳、独身、平社員。
商品企画部に勤める北山 瑠々は、
真面目に働いているのに、なぜか企画だけが一向に通らない。
「悪くないけど、刺さらない」
「無難すぎる」
そう言われ続け、同期は昇進し、
瑠々だけが取り残されていく。
ある日、終電間際まで残業した夜。
誰にも会いたくなくて入った会社の非常階段で、
いつもと同じように扉を開けたはずだった。
――その先は、北欧神話の世界だった。
世界樹が空を貫き、
神々が“終わり(ラグナロク)”を前提に生きる世界。
合理的で、冷静で、
それでいてどこか諦観に満ちた価値観。
元の世界に戻る方法を探す中で、
瑠々は神々の思想や神話構造に触れていく。
そして翌日。
何事もなかったように会社へ出勤した瑠々は、
前夜の体験をうまく言葉にできないまま、
ひとつの企画案を提出する。
それは北欧神話の価値観を
無意識に翻訳した商品アイデアだった。
「思想がある」
「今の時代に合っている」
そう評価され、
瑠々の企画は、初めて正式に承認される。
なぜ通ったのか、自分でもわからない。
ただ非常階段の扉を開けるたび、
瑠々は再び北欧神話の世界へ足を踏み入れ、
現実では評価されなかった感性が、
少しずつ“武器”に変わっていく。
これは、
出世もできなかった一人の平社員が、
神話と現実のあいだで、
自分の価値を見つけていく物語。